Samarqand Part 2|夜のレギスタンと青の回廊
旅人は、道路を渡った。
そこから先には、 それまで歩いてきたサマルカンドとは少し違う、 静かな路地が続いていた。
ユダヤ人街。
古い家。
白い壁。
扉。
細い道。
人の生活の気配はある。
けれど、旅人はここではあまり言葉を足さなかった。
ただ歩いた。
そして、写真を撮った。
また、青が見えてきた
路地を戻り、再び歩き始めた。
やがて、大きな青が見えてきた。
ビビハニム。
旅人は、また見上げた。
青いドーム。
青い模様。
その上には、秋の空。
サマルカンドでは、 何度も空を見上げることになる。
同じ青なのに、 場所が変わるたびに少しずつ違って見えた。
シヨブ・バザール
そのまま、シヨブ・バザールへ入った。
巨大な市場だった。
果物。
野菜。
ナッツ。
香辛料。
ナン。
乾物。
とにかく、何でもある。
売る人。
買う人。
荷物を運ぶ人。
声をかける人。
旅人は、その中を歩いた。
すると、 ザクロを絞っている店が目に入った。
大きなザクロを割り、 その場で果汁を絞っている。
旅人が見ていると、 店のにいちゃんがこちらを向いた。
「飲んでいくかい?」
旅人は笑った。
もちろん、飲んでいく。
鮮やかな赤いジュースを一杯。
それを飲み終えると、 また歩き始めた。
そしてさらに奥に。地元の人が「上海マーケット」と呼ぶ、カオスな空間があった。
「日本?」
シヨブ・バザールをあとにして、 陸橋を渡った。
その先に、 ハズラティ・ヒズル・モスクが見えてくる。
何人かの地元のおじさんたちに声をかけられた。
「どこから来た?」
「日本」
そう答えた瞬間、 みんなの顔が明るくなった。
「ジャポン!」
なぜか、とても喜んでくれた。
そして今度は、
「写真、写真」
ということになった。
一人と撮る。
二人と撮る。
また一人入ってくる。
最後には、みんなで撮る。
ちょっとした撮影大会になった。
何がそんなに楽しいのか、 旅人にもよく分からない。
でも、みんな笑っている。
だから、旅人も笑った。
明日のために
ハズラティ・ヒズル・モスクを見学した。
そのあと、旅人は左へ折れた。
この先が、 シャーヒ・ズィンダへ続いている。
この日は中へ入らなかった。
日中は、とても混み合う。
旅人は翌朝、 いちばん早い時間に来ようと決めていた。
だから今日は、 道だけ確認しておく。
「明日は、ここを行けばいい」
一度歩いておけば迷わない。
それだけ確認して、 旅人は街へ戻った。
夜のレギスタン
夜。
ビビハニムの夜景を見た後、
旅人は、もう一度レギスタン広場へ向かった。
昼とは、まるで違う景色だった。
建物に光が走る。
白から青へ。
青から紫へ。
赤へ。
金へ。
模様が動く。
音楽が、広場いっぱいに広がっていく。
周りの人たちも、 同じように見上げている。
旅人は、ただ見ていた。
華やかだった。
圧倒的に華やかだった。
それなのに、 どこか切なかった。
なぜなのか、 自分でも分からなかった。
ただ見ていた。
そして、
気がついたら、涙が流れていた。
悲しかったわけではない。
何かを思い出したわけでもない。
ただ、 その光景があまりにも美しかった。
ずっと見たかった場所に、 本当に立っていた。
それだけだった。
朝7時
翌朝。
旅人は、 昨日確認しておいた道を歩いた。
秋の朝。
とてもいい天気だった。
空は、きれいに晴れていた。
朝7時。
シャーヒ・ズィンダには、 まだほとんど人がいなかった。
日中の混雑が嘘のようだった。
旅人は階段を上がった。
そして、 青の中へ入っていった。
頭上には青空。
その下には、青い建物。
空の青。
タイルの青。
同じ青なのに、 まったく違う。
深い青。
明るい青。
緑を帯びた青。
光を受ける青。
旅人は写真を撮った。
少し歩く。
また立ち止まる。
また撮る。
人の影がほとんどない。
だから、 目の前にあるものを、 そのまま写真に収めることができた。
サマルカンドブルー。
その言葉は、以前から知っていた。
でも、この朝になって初めて、 本当にその色を見たような気がした。
奇跡の青の町
サマルカンド。
奇跡の青の町。
建物の青。
空の青。
人がまとう青。
昼の青。
夜の青。
旅人は、この街へ来る前から、 きっと素敵な場所だと思っていた。
実際に来てみたら、
やっぱり素敵だった。
それでよかった。
旅には、ときどき、 それだけで十分な場所がある。
サマルカンドは、 そんな街だった。
Mojizaviy Ko'k Shahar|奇跡の青の町
Samarqand|Nasiba Abdullayeva
そしてもう一曲。
サマルカンド生まれの歌手、Nasiba Abdullayevaが歌う「Samarqand」。
旅人が歩いた青の町には、 ずっと前から、この街を歌う歌があった。























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